守月堂 ー今夜も、良い月をー

夜、ふと立ち止まったときに。 ここは、月の灯りがともる場所。 守月堂を舞台に、 月守衆と人間たちの物語を綴っています。 これは、 月に導かれた灯火たちの御伽話。 疲れた夜に、 少しだけ心を休めてもらえたなら幸いです。 ――今夜も、良い月を。

守月堂「ありがとうの言葉」

守月堂物語

「ありがとうの言葉」

 

 

守月堂客室、十六夜の間。

 

守月衆の朱音(あかね)です。

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私は座椅子に座り、

何かを書くわけでもなく、

ただ、静かに月を見上げていました。

ソラ
「ほな、朱音さん。ここに、あったかいお茶置いときますわな。」

朱音
「ありがとう。ソラくん。」

ソラ
「ほんで今夜は、この縁側へ続くふすま、閉めときます。」

「誰も来ませんよってに。」

「一人で、ごゆっくりお過ごしを。」

朱音
「ありがとう。」

そう言って、ソラくんは静かにふすまを閉めました。

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部屋には、私一人。

今夜、私は手紙を書く。

相手は……

亡き夫です。

 

 


あなたへ。

朱音です。

久しぶりだね。

あなたが交通事故で亡くなって。

あまりにも突然のことで、

私は、さよならも、

ありがとうも言えず、

ただ、ただ、毎日泣いていたんだよ。

それがある夜。

私は月に招かれた。

そして、守月堂と出会い。

月守衆のみんなとふれあう中、

守月堂の最奥、

「月の拠り所」で、

あなたに、もう一度だけ会えた。

泣いたなぁ。

あの時、本当に泣いた。

だって、

あんな奇跡、想像できるわけないじゃない。

でも、あなたに、

「ありがとう。」

そう言えた。

そして、

ちゃんと「さよなら。」も言えた。

ねぇ、あなた。

私ね。

また仕事を再開したんだよ。

神戸に戻って、

また税理士をしてるの。

ちゃんと元気にやってるよ。

私ね、

四十五歳になっちゃった。

もう、おばさんだね。

でもね……

でも……

そんな歳でって、

笑われるかな?

でもね。

私……

また恋してるんだよ。

不思議な人にね。

いいよね。

なんか恥ずかしいな。でも...本気なんだ。

 

あなた。

私……

また歩き出してもいいよね。

 

あなたなら、

「もちろん。」

そう笑ってくれるよね。

あなた。

心から、愛していました。

ありがとう。

そして……

これからの私を、

見守っていてください。

           朱音

 


気が付けば、

私は泣いていました。

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一人、

静かに泣いていました。

涙を拭き、

便箋を丁寧に封筒へしまいます。

ふすまを開けると、

優しい夜風が部屋へ流れ込みました。

その先には、

きれいな月。

私は縁側へ腰を下ろします。

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レナ
「書き終わりました?」

いつの間にか、

レナちゃんが立っていました。

ソラ
「誰も来ぉへんよう、

二人で守ってましたわ。」

そう言って、

ソラくんがニコッと笑います。

朱音
「レナちゃん。」

「ソラくん。」

「この手紙……

守月堂のどこかに置いておいてくれない?」

「誰にも渡せない……

私の、大切な手紙。」

 

すると、ソラくんとレナちゃんが

明るく答えてくれる。

 

ソラ
「かしこまりましたぁ!!」

レナ
「大切に、お預かりします!!」

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ソラ
「誰にも見つからへん場所に、

ちゃんと置いときます!お任せあれ!!」

 

私は、小さく微笑みました。

彼らはわざとこうして明るく接してくれる。

 

朱音
「ありがとう。私の、大切な家族たち。」

夜風が、

そっと封筒を揺らしました。

この手紙を渡すことはありません。

でも。

この想いは、

きっと月まで届いている。

今夜も、良い月を。🌙

 

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朱音「まーもるさん....私の気持ち。

気づいてる...かな?」