守月堂 ー今夜も、良い月をー

夜、ふと立ち止まったときに。 ここは、月の灯りがともる場所。 守月堂を舞台に、 月守衆と人間たちの物語を綴っています。 これは、 月に導かれた灯火たちの御伽話。 疲れた夜に、 少しだけ心を休めてもらえたなら幸いです。 ――今夜も、良い月を。

月の旅人さん物語①ー1「夢の中でも失恋ー??」

🌕月の旅人さんとは、守月堂を一夜だけ訪れる、一期一会のお客様のことです。

 

月の旅人さん物語①-1

「夢の中でも失恋ー??」

 

 

酔っているのか。

夢なのか。

どっちかわからない。

ただ、一つだけ言えることがある。

目の前に、とてつもなく可愛い子がいる。

可愛いと綺麗をあわせ持つ、

最高の女性が目の前にいる。

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俺は彼女に案内されるまま、

店の中へ入った。

 

大きな灯籠のある広間を抜け、

広い中庭を歩き、

こぢんまりとした和室へ案内される。

あちらこちらに人影が見える。

楽しそうな笑い声。

老若男女、いろんなお客さんがいるようだ。

(この夢……リアルすぎない?)

そんなことを考えていると、
先ほどの女性が、お茶とお団子を運んできてくれた。

「あ、ありがとう。」

レナ
「いえいえ。今夜も月が綺麗ですね。」

 

「あ、はい!」

 

レナ
「ふふふっ。そんなに緊張しないでくださいね。」

「今夜はゆっくり月を見て、

心休めてくださいね。」

「あ、はい……。」

その優しい声に、

張りつめていた心が少しずつほどけていく。

 

俺は先日、失恋した。

ずっと片想いだった。

友達のような関係で、いつも一緒にいた。

勇気を出して告白した。

返ってきた言葉は、

「ごめん。彼氏には無理だわ。」

その一言で、

長年の恋は終わった。

そう。

今夜の飲み会は、

親友たちが開いてくれた、

『失恋立ち直れ飲み会』

だったのだ。

 

なのに。

そんな夜に、

俺は出会ってしまった。

最高の女性に!

「あ、あの……レナさん?」

レナ

「はい?どうされました?」

「俺は夢を見てるのでしょうか?」

彼女はクスクスと笑う。

レナ
「はい。夢ですね。」

「ですよね!だって、あなたみたいな綺麗な人と……。」

レナ
「え?今なんて?」

 

俺は完全に舞い上がっていた。

こないだ失恋したばかりなのに。

 

「あ、あの!!」

「俺、一目惚れしました!

俺と付き合ってください!!」

 

俺は手を差し出し、

勢いよく頭を下げた。

昔の恋愛バラエティで、

こんな告白シーンを見た気がする。

ドキドキして、

顔を上げられない。

勇気を振り絞って顔を上げる。

すると――

レナさんは、優しく微笑んでいた。

(ま、まさか……。)

(告白成功!?)

 

レナ
「無理ですねー。」

「……へ?」

レナ
「だって、これ、夢ですもん。」

「へ?」

彼女はクスクス笑う。

レナ
「だって、あなたがさっき、

『これ夢ですよね』って。」

「あはは……。」

「そうでした……。」

「夢かぁ……。」

「そうだよなぁ。」

 

彼女の優しい声が聞こえる。

 

レナ
「でも、嬉しかったですよ。ありがとうございます。」

俺は彼女を見つめる。

レナ
「いつか、私なんかより

もっと素敵な女性に出逢われること、祈ってますね。」

 

「ありがとう。その言葉、嬉しいです。こんな俺でも、出会えるかな?」

レナ

「はい、必ず。

あなたは月に招かれて、ここへ来られたんです。きっと、素敵なご縁がありますよ。

だって、ここには、心の優しい人しか来れないですから」

 

そう言ってレナさんは笑った。

 

「……ありがとう。」

 

 

 

閉店の時間。別れのときーーー。

 

あれから俺は、

レナさんにたくさん話を聞いてもらった。

長年片想いしていたこと。

勇気を出して告白したこと。

失恋したこと。

もう恋なんてするか、と

思っていたこと。

そして。

レナさんに、
一目惚れしたこと。

彼女は、

全部笑顔で聞いてくれた。

出口には、

レナさんが立っていた。

その横には、

髭ヅラでガタイのいい男が立っていたのが、

少しだけ邪魔だったけど。(誰だこの人?)

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レナ
「頑張ってくださいね!」

彼女が手を差し出す。

俺はその手をしっかり握った。

「はい!」

「レナさんに負けないくらい、

素晴らしい女性に出会ってみせます!」

精一杯の強がりだった。

俺は手を振る彼女を見ながら、

暖簾をくぐる。

一瞬の暗転。

そして目を開けると、

夜の公園のベンチに座っていた。

 

 

「ゆ、夢だったんだ……ほんとに。」

空を見上げる。

綺麗な半月が浮かんでいた。

「彼女の名前……なんだったかな。」

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「でも、いい夢だったな。」

「さぁ……帰ろうかな。」

そう言って、

俺は家路についた。

 

 

 


.......その頃、守月堂では。

ソラ
「レナ、お前また、ふったんか?」

レナ
「また、ってなによ?」

ソラ
「だって、お前、今まで撃墜してきた男性の数、半端ないぞ。」

レナ
「仕方ないじゃない。付き合えるわけないし。」

ソラ
「ま、そうだよなー。」

レナ
「でしょ?」

ソラ
「彼の幸せ願って、呑みますか?」

レナ
「いいね。」

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今夜も、良い月を。

 

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